現実逃避でペーパーバックを読んでいるわけですが、ラボで8時間集中して効率よく仕事をして、ボスに言われたタスクさらには自分の将来のための作業をして、週末も合計8時間程度、つまり週に50時間くらい働く、そして家ではノンビリダラダラと好きなことをする、というのは別に現実逃避ではなくてただ趣味を楽しんでいるだけではないか、場所と時間を明確に区別して仕事も遊びも充実させているということではないか、と思ったりしつつある。まあ、とは言うものの、圧倒的なデカい仕事を任されて家に帰る時間もない、という生活にも憧れるのだけれど。
ということで現実逃避を積極的に行い、研究とは全く関係ない考察をしてみた。
Memory Manがなぜサクサク読めるのを考えてみると、おそらくこの小説は典型的なこちらの娯楽作品であり期待通りの冒険小説あるいはミステリーだからだと思う。つまり信頼と実績があり、7ドル程度を支払って十分楽しめるテイストなのである。馴染みの定食屋で定食を食べるようなものだ。
では、こちらの典型的なミステリーはどういうものかというと、例えば、
主人公の名前はピート・ストレート(的なスマートな名前、ゴンザレスとかアレクサンダーとかではない)。元海兵隊。カレッジフットボールの花形プレーヤーだったりする。5か国語に堪能。寡黙、独りを好む。テネシー州の片田舎に50エーカーの農場を所有して、社会から離れて生活している。「組織」から依頼される仕事をこなすが、「組織」とピートの関係は不明。巨漢(しかしながら俊敏)で、ダイナーやハンバーガーショップで大量のフレンチフライを喰らうシーンがたまに描かれたりする。そして、ピートのパートナー的な存在として女性キャラが出てくる。キャサリン・メイラード(的な名前)、ピートの元同僚。海兵隊所属、現在の階級は少佐。美貌。スレンダー。シングルマザー(娘の名はリリー)。ピートとキャサリンはかつて恋愛関係にあったようであるが、それが物語で述べられることはない。ハリウッド映画と同様に、お色気シーンはほのめかされるもののこの手の小説ではあまり出てこない。さらにシリーズを通じて謎の集団「組織」が描かれる。これがこのシリーズの1つのネタになる。「組織」のリーダーは例えば「ジェネラル」とか「大佐」とか「プロフェッサー」とか呼ばれており、本名は明らかにされない。この人物はピートが海兵隊を去る「ある出来事」に関連していたりする。そして「組織」の目的とは何か?、みたいな。
ああ、なんてチープでありきたりな物語だろうか。でもこういうコテコテの小説は売れるし、読むとソコソコ楽しいのである(が、もちろん、人生を変える1冊にはならない)。
第1巻で、ピートおよび周辺キャラと設定の紹介を兼ねた事件。次に、その延長線上で、別の事件。3巻では、ピートとリリー(キャサリンの娘)のエピソードが描かれキャラに奥行きを出す。例えば、
姿を現したのはキャサリンであった。キャサリン・メイラード海兵隊少佐である。ユニフォームではない。ジーンズとGAPと書かれたフードをラフに着こなしている。
「私服姿のメイラード少佐が何の用事かな?」、ピートは警戒感を露骨にあらわにしながら聞いた。
「実は、誘拐事件の捜査に協力してもらいたいの」
「誘拐事件?申し訳ないが、俺は何でも屋でも探偵でもない。あんたらに協力したのは、金のためでも、友情とやらを大切にしたためでもない。誘拐された海兵隊員には申し訳ないが、あんたら身内で解決すべきだ。俺には関係ない」
「確かに言うとおりね。でも、事件に巻き込まれているのがリリー・メイラードだとしたら、あなたはどう思うかしら。誘拐されたのは私の娘なの」
ピートは言葉を失った。
みたいなノリである(ちなみに、私服姿ということは、この依頼がプライベートなモノであることを示唆しているわけで、ピートもそれを感じて不信感を抱くわけです)。そして、この事件の裏に「組織」が関与していることが示唆され、4巻では「組織」とピートの関係に焦点が当てられる。この段階でシリーズが売れていれば、この先はあーでもないこーでもないと、例えばピートがニューヨークに行って事件に巻き込まれたり、海兵隊時代のピートのライバルが敵キャラで出てきたり、そういうネタで先へ進む。シリーズの人気がそれほどでもなければ、5巻でピートの過去と「組織」さらにはジェネラルの秘密が暴かれる。ピートとキャサリンがプライベートで結ばれることはなく、物語は終わる。
と、書いていたらピート・ストレートシリーズを書いてみたくなってきた。長編小説なんて書いたことないから、もしかしたら練習もかねてこういうところから始めるのが良いかもしれない。論文と同様で、最初からデカいネタを目指さずに、ルール通りにスキルに沿って書いてみるのである。タイトルからすでに内容が分かるようなネタでも初心者には十分である。そして書く力がついたらオリジナルを狙う。
そんな感じ。
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